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網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究班 研究テーマ
研究課題名(課題番号) 網膜脈絡膜・視神経萎縮症に関する調査研究(23FC1043)
研究代表者 近藤 峰生(三重大学大学院医学系研究科臨床医学系講座眼科学)
研究事業予定期間 令和5年4月1日から令和8年3 月31日まで
 
研究班の目的
 わが国の視覚障害者(矯正視力0.5以下と定義)は2007年の調査で約164万人と推定され、視覚障害の社会的損失は健康障害分を含め8.8兆円と試算されている1)。予防や治療によりこの視覚障害者数を減らすことは、患者のQOL改善だけでなく日本全体の生産性にも大きく貢献することが予想される。視覚障害の主な原因疾患は、緑内障、網膜色素変性、糖尿病網膜症、黄斑変性であるが、眼科には病態が明らかでなく、治療方法が確立していない希少難病も多く存在する。眼科における希少難病の多くは網膜脈絡膜・視神経萎縮症の遺伝性疾患である。本研究では、このような網膜脈絡膜・視神経萎縮の疾患群の調査研究を主体とする。
 本研究はこれまで継続的かつ計画的にオールジャパン体制で研究を推進しており、多くの成果を達成してきた。令和2年~令和4年の研究班(研究代表者:坂本泰二)においては、最新データによる視覚障害認定の全国調査結果をまとめて公表し、黄斑部毛細血管拡張症では診療ガイドラインを出版した。また萎縮型加齢黄斑変性、黄斑ジストロフィ、急性帯状潜在性網膜外層症においては日本で初めて患者数の推定に成功した。さらに網膜色素変性は難病プラットフォームと連携し3000人以上の患者レジストリを構築し、日本で頻度の高い原因遺伝子を特定した。レーベル遺伝性視神経症では全国有病率調査の結果を英文誌に掲載した2)。また最近、遺伝性網脈絡膜疾患に対する遺伝子検査ガイドラインを作成し、学会ホームページに公開している3)
 令和5年から始まる新たな3年間では、これまでの成果を発展させつつ、3つの新たな試みを推進する。(1)新たな難病候補疾患の選定とその診断ガイドライン、患者数調査、レジストリ構築。杆体一色覚と自己免疫網膜症では新しい調査研究を開始する。(2)遺伝子治療のガイドライン策定と日本での実施体制の構築。3年以内に遺伝性網膜疾患の遺伝子検査と遺伝子治療が臨床実装される可能性が高く、それに向けて本研究班で適切なガイドラインを策定するとともに、効率的な検査と治療の実施体制を構築する。(3)関連学会との連携および医療従事者、国民、患者への疾患普及と啓発を推進する。
1)  Roberts CB, Hiratsuka Y, et al. Arch Ophthalmol 128:766-771, 2010.
2)  Takano F, Ueda A, et al. Orphanet J Rare Dis. 2022;17(1):319.
 
流れ図